【2019.7.25 追記】
こんにちは!整備士のRedT(@RedT41921)です。
前回に続き今回も農業用ドローンをメーカー別にピックアップしたいと思います。
農業用ドローンの現状や外国産ドローンなどは前回の記事を参照ください。
【関連記事】大きく動き出した農業へのドローン活用
【関連記事】自動飛行やハイブリッド機まで!気になる農業用ドローンをピックアップ!
正直なところ外国産、特に中国産のドローンと国産のドローンを比べてしまうとかなり見劣りしてしまうのは否めませんでした。
そもそもドローンはフライトコントローラー(ドローンの脳)が重要なので、早くからフライトコントローラーの開発、製造に注力している中国に勝てるわけがありません。安価で性能が良い物が多い為、ドローンを自作される方も中国産の物を使っている事かと思います。
しかし最近では国産のフライトコントローラーも開発が進み完全内製化するメーカーも増えてきました。日本人として日本の企業が頑張っているのを見ると応援したくなるのは当然ですよね。
そこで今回は国産メーカーを中心に農業用ドローンをピックアップしていきたいと思います。
丸山製作所&エンルート 共同開発『MMC940AC-1』『MMC1501』
私が農業用ドローンというものを初めて見たのが2016年に発売された丸山製作所とエンルートが共同開発したドローンでした。
初めて見たときは「防除にドローン?流行らないだろうなぁ、しかも高いし」と思っていましたが、ほんの数年で私の考えは覆されました。
下の写真は丸山製作所で販売している型式になります。
こちらはエンルートで発売している型式です。サイズ表記がやや違います。
共同開発ですが、2メーカー間での違いは確認できる範囲では噴霧時に使うポンプが違います。丸山は自社のピストンポンプが採用されていますが、エンルートは高性能ポンプと書かれているだけでどこのポンプかは解りません。
丸山製作所はポンプ製品の防除機で国内トップシェアです。信頼も実績もあるポンプなのになぜエンルート側では採用していないのか意味が解りません。
そして一番の懸念材料はどちらのドローンも手動飛行のみなのに価格が非常に高い事です。DJI製と比べてしまうと単純に倍以上の価格差になります。いくらポンプの性能が高いとはいえ倍の価格差を埋めるのは難しいですね。
ヤマハ発動機『YMR-08』
農業でヤマハと言えば無人ヘリコプターが有名です。
上の写真は2018年12月に発売された新型機『FAZER R』です。ヤンマーでも無人ヘリコプターは発売されていますがヤマハのOEMになります。ヤンマーでは『YF390AX』という型式です。
価格は1,285万2,000円という海外の高級車並みの価格です。個人で使っている人は少ないと思いますが、事業所などで購入して農家さんなどがライセンスを取り除草剤等の散布の請負をしているというケースが殆どかと思います。
価格面を考慮しなければ除草剤や肥料の散布効率はドローンの比ではありません。
そんなヤマハがドローン事業に進出した第一弾のドローンが下のモデルです。
まず目を引くのがその独特なフォルムと左右に付いた二重反転ローターです。初めて見たときは「何か生き物っぽい…ていうかカニっぽい?」と思いました。上部の黒い2本の模様はバッテリーになっています。取り外しが簡単そうですね。
他のメーカーのドローンには見られない左右の反転ローターが強力なダウンウォッシュを作るそうです。ノズルの位置もローターの真下に付いていないのも独特ですね。
操作方法は無人ヘリコプターと同じく
- ノーマルモード
- 自動クルーズコントロールモード
- 自動ターンアシストモード
1は完全に手動、2は飛行速度を維持し直進のみ自動、3は2に加え散布スイッチのオンオフで横に移動する機能が追加されます。
ヤマハは無人ヘリコプターは大規模農家や請負業者向けで、ドローンを小規模の圃場や個人の農家さん向けにと、ターゲットを別々にしています。
しかしながら小売価格は255.5万円。無人ヘリコプターの1,285万円と比べてしまうと安く感じますが、予備バッテリーなどを買ったりしていると、結構な金額になってしまいます。
自動飛行では無く半自動飛行で、粒剤散布もする事が出来ません。
無人ヘリコプターと同じ操作方法は経験者には魅力的ですが、この小売価格で除草剤散布のみなのは少々きついかなと感じます。
ちなみにバッテリーとモーターは国内で作られたものです。バッテリーはTDK、モーターは日本電産です。
ヤマハはドローンに関しては農機具メーカーでは(株)やまびこ と提携し、販売しています。
ナイルワークス『Nile-T19』
株式会社ナイルワークスも国内のメーカーです。2019年3月に住友化学やクミアイ化学らに第三者割当増資を実施しました。その為、全農や単協等で押しているドローンメーカーです。
機種は一機種で、自動飛行操作のみです。とても特徴的なのがプロペラを全周ガードする為のフレームが付いています。そして8枚のプロペラですが、4カ所全て二重反転ローターになっているとても珍しい形のドローンです。一見するととてもゴツい感じがしますね。ガンダムで言うとガンタンクみたいな…。
しかし、その見た目からは想像できませんがアンドロイド端末で自動飛行可能、更にフライトコントローラーは自社開発、センサーは12種類付いているというハイスペックモデル。粒剤タンクも後日発売するとのことで注目していきたいドローンの1つです。
購入費用は他の自動飛行と同じように基地局を別途購入しなければなりませんので、総額の購入費用はXAGのP30と同じぐらいだったかと思います。
国産の自動飛行ドローンなので是非とも頑張ってほしいと思います。
【追記】
メーカー希望小売価格はオープン価格ですが、参考価格は基地局や測量機が付いたセット販売で¥4,678,000(税別)だそうです。
書き忘れていましたが散布と同時に撮影も出来るので農薬をまきながら撮影して、それを元に肥料を散布する事も可能ですね。
更に散布高度は30~50㎝と作物に近く、水平の誤差も±2㎝ととても高性能。よほど風の強い時に散布しない限りドリフトの心配は全くありませんね。
マゼックス『飛助MG』
資本金1,000万円、従業員数10名というとても小さなドローンメーカーです。農業用ドローンの他に苗木運搬や延線や索道作業のドローンなども販売しています。
小さいながら自前で教習所、整備所などを持っていて開発、製造、販売、整備を全て一括で行えるため、ドローン価格がとても安いのがこのメーカーのメリットです。
購入費用は全て税抜きで
- 本体価格 998,000円
- Aセット 168,000円(バッテリー2個+充電器1個)
- Bセット 338,000円(バッテリー4個+充電器2個)
本体にはバッテリーが付いていなので購入の際は、AセットかBセットを購入する必要が有ります。
商社をはさまないので流通のコストをカットし部品等は全て国産品では有りませんが独自のルートで大量生産し大幅にコストカットをしているそうです。
プロペラの数は4枚。一番ダウンウォッシュが強い枚数です。ですが4枚タイプは風の渦が出来てしまうのでドリフトの心配があります。しかし、マゼックスでは独自の技術で前後のローターを切り替えて操作する事により渦を打ち消しているとの事です。
この技術は現在JP0941特許出願中になっています。
フライトモードは手動ですがプロポには横に4m移動させるスイッチが付いています。現段階ではまだこの機能は解放されていませんが、許可が出たら使えるようになるようです。GPSを使っての補助機能も付いているようで、初心者でも使いやすい機体ではないかと思います。
粒剤タンクもオプションで発売しているので、肥料を撒きたい方もこれ一台で可能です。
マゼックスのHPは非常に見やすく細かい所も丁寧に説明しているので飛助だけでなく、農業用ドローンに関心のある方は一度ご覧になった方が良いかと思います。
総括
国産のドローンをピックアップしてきましたが、価格面に目をつぶれば日本の圃場を良く考えたドローンの設計になっているなと感じました。
今回ピックアップした中でも個人的に一番気になるのはやはりマゼックスの飛助MGです。バッテリー等揃えても120~130万で済むのは他社には中々真似出来ないところではないでしょうか?(MG-1SAKもその位かもしれませんが…)
自動飛行はたしかに楽で自動飛行ならライセンスも要らなくなる?等の噂もありますが、やはり400万を超える価格は一般の農家さんには高すぎる価格です。圃場が整備されて1町田やそれ以上の圃場になれば導入のメリットも大きくなりますが、今の状況を考えると手動の低価格モデルが主流になるのではと考えています。
しかしマゼックスは整備等全て自社で行っているとはいえ、規模がまだまだ小さいので購入後のアフターやメンテナンス等がやや心配です。販売店が近くにない所では農家さんが直接マゼックスと取引しなければならないので、それだったらクボタかヤンマーのドローンでいいかとなってしまいますね。
今後市場が広がっていき国内のメーカーの流通がキチンと整って来れば中国産のドローンのシェアを巻き返す時が来るかもしれませんね。