農機具情報局

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大きく動き出した農業へのドローン活用

こんにちは!整備士のRedT(@RedT41921)です。

最近は連日の小物農機の修理で秋農機の準備が全く進まない状況が続いています。8月末には稲刈りが始まるので結構焦っております。

さて、表題の通り昨年から農業でもドローンと言う名前を耳にする機会がとても増えてきました。農家さんの高齢化や人手不足、農産物の競争力の低下など農業には数多くの問題が山積みになっています。

そんな中、国が進める『スマート農業』の中でも現段階で最も期待できるのがドローンの農業での活用ではないでしょうか?

まずは現在のドローン規制の確認

ドローンを使って稲の様子を撮影して分析したり、空中から除草剤を散布したりとすでにドローンで防除等をする為のライセンスを取得している方もいらっしゃる事と思います。

ご存知の方も多いと思いますが現在のドローン規制をおさらいしたいと思います。

農業用ドローンで除草剤等(肥料は含まず)を散布する場合は『航空法』と『農薬取締法』の2つの規制を受けます。

センシングで飛ばすだけなら良いのですが農薬散布は危険物の投下に当たるので事前に国土交通省に申請をしなければいけません。更に農林水産省にも提出しなければならない為、個人でこれらを申請するのはかなりの負担になります。

代行申請が認められているので、現状では教習所等の登録認定等機関に散布計画などを提出し代行申請を頼むのが一番手っ取り早いですね。

農業用ドローンの規制はこちらが解りやすいと思います。

【今さら聞けない営農情報】第1回 完全自動飛行ドローンの規制

規制に関しては今後も大幅に緩和されるはずなので解り次第追記したいと思います。

農業用ドローン市場は2024年には760億円に

農業用ドローンは正確には『マルチローター(3個以上のローターを搭載した回転翼機)』と言う名称が正しいのですが、言い慣れないのでこのブログでは農業用ドローンもしくはドローンと呼ぶことにします。

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農業用ドローンの市場は2018年は175億円、2024年には760億円に拡大する見込みになっています。

 

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参考:インプレス総合研究所のレポートより

上のデータはインプレスからの引用です。ドローン市場全体で見て凄まじい右肩上がりですね。農業部門は2022年にはソーラーパネル等の点検部門に抜かれますがドローン市場の大部分を占めているのは変わりありません。

2018年は認定オペレーターが約2,000名増

農業用ドローンの登録台数は2017年に729機、2018年には1,474機と約700機も増加しました。オペレーター数は2017年2,954名から2018年5,082名と2,000名程度増加。

オペレーター数の方が圧倒的に多いわけですが、これはとりあえずライセンスだけ取得した人や、共同でドローンを購入した人が多かったためです。

2019年は登録台数、オペレーター数共に前年を大幅に上回るだろうと思います。

そして2019年の重要な変更点はライセンス制度が変わるという事です。

現在はライセンスの裏面にドローンの機種名が記載され、原則そのドローンだけを操作しても良いというライセンスです。

その為、農機業界大手のクボタさんは早い段階からドローンの教習を自前で定期的に行い自社(DJI製)のドローンの拡販に努めています。

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他の一般のドローン教習所では数社の中から自分の使いたいドローンを選択してライセンスを取る為、自前で教習所を用意できれば農業用ドローンの市場を独占できるのは容易に想像できますね。

そのかいもあってか、2018年の農業用ドローン販売台数約1,200台のうち800台がDJI製のドローンで、残りの400台は国内メーカーになるそうです。

農業用ドローンのメーカーについては次回説明することにしてライセンスの話を続けたいと思います。

ライセンスが『自動飛行』と『遠隔』の二種に

世界一のドローン大国の中国ではすでに始まっていますが、今年は日本でも自動運転のドローンがスタートする『自動運転元年』の年です。

2019年にはライセンスの機種限定の項目が緩和(廃止)され2種類のライセンスに変更されます。

自動運転ドローン専用の『自動飛行』と手動操作の『遠隔』の2種類に分類され自動タイプか手動タイプかだけで機種は問わないようになりました。

教習所によって違いますが自動飛行のライセンスのみ取得する場合は手動のライセンス取得料よりも多少安く設定されているようです。

自動も手動もどちらも一長一短があるので費用は掛かりますが、自動と手動が一緒にとれる教習所もあるのでどちらも取得しておくのが無難かと思います。

拡販の課題は価格とバッテリー

農業用ドローンはセンシングもありますがメインは空中から除草剤等を散布するのが大きな役割です。その為、他の分野と違い長い時間飛行させなければなりません。

現状ではバッテリー1セットで10~12分の飛行時間、散布可能範囲は1haにとどまります。DJI製のMG-1では通常充電で60分かかる為、連続で散布する場合は5セット程必要になります。バッテリーが1個あたり5万円とすると5セット(10個)×5万円で約50万円も本体価格にプラスされます。充電器も別途買わなければいけないので更に負担額は増えます。

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写真はMG-1用バッテリーです。

そして自動運転ドローンの場合はGNSSの精度を上げる為、基地局も必須になってきます。1基70万以上するので自動運転ドローンは総額で400万程になります。

そして定期メンテナンスと部品の交換も必要になってくる為、採算を取るにはそれなりに面積がなければペイするのは難しいのが現状です。

本体価格を下げるのは難しいと思うのでバッテリーの連続使用時間を増やすか、今の半分位の価格に抑えるのが急務ではないでしょうか?

総括

農業用ドローンの法改正等がいまいち告知されず、ネットで調べてもはっきりと解らない事が多すぎる為、ドローンの記事を書こうと思っていても中々進みませんでした。

具体的な規制緩和やライセンス制度の変更等もっと国から情報を発信していかなければ農家さんや私達販売店はどうして良いのか解りません。

多くの農家さんや業者が注目している農業用ドローンなのでしっかりとした指針を示し適時開示していく姿勢をお願いしたいと思います。

それでは次回は農業用ドローンはどんな種類があるのかをまとめます。

【関連記事】自動飛行やハイブリッド機まで!気になる農業用ドローンをピックアップ!