こんにちは!整備士のRedT(@RedT41921)です。
早いもので五月もあっという間に終わってしまいます。農家さんも田植えを終えて一息ついている頃ではないでしょうか。
しかし、田植えが終わればすぐに畦畔の草刈り作業が始まってしまいますね。これから気温も高くなるので熱中症には十分に注意して農作業をして頂きたいと思います。
さて、最近農家さんから「農業機械の耐用年数はどれくらい?」と聞かれる事がしばしばあります。
作付面積や使い方で簡単には答えが出ないのですが、今までの経験から自分なりに書いてみたいと思います。
減価償却費の耐用年数は一律7年
平成20年に税制改正され、農業用設備はトラクターであろうが田植機であろうが一律で7年に設定されました。
解りやすくなったので税金の計算をしやすいとは思いますが、全ての農業機械が7年もつかと言われると疑問に思います。
大型機械は年数では無く時間
大型機械(トラ、コン、田)は使用した年数では無く使用した時間が重要になります。
作付面積が1町の人と10町の人とでは、仮に1台で作業をしているのならば単純に1年で10倍も使用した時間は違います。
自動車で言えば走行距離ですね。1年で5,000㎞の人もいれば20,000㎞乗る人もいるので当然20,000㎞乗っている人の方が耐用年数は短くなりますよね。
トラクターやコンバイン、田植機には殆どアワーメーターが付いています。
最近の農業機械であればデジタル表示ですが昔は上の写真の様なアナログのアワーメーターが付いています。
ご自分の農業機械が何時間動いているかは毎年チェックするようにしましょう。
故障が出やすくなる目安の時間は?
今までの経験から大型の農業機械の故障が出やすくなる目安の時間を軽微な故障と寛大な故障とで分けたいと思います。
故障と言ってもそれ程重い故障では無く整備になるかと思います。
ファンベルトや駆動ベルト、前輪などの油漏れ等比較的修理代のかからない故障です。エンジンオイルの交換は別ですので交換の規定時間毎に行います。
トラクターであれば、後車軸から油が漏れたり、ユニバーサルジョイントが折れたり、ハーフクローラタイプだとクローラの交換やアイドラなどがガタガタになったりと修理代も10万円以上はかかってしまうような故障が増えます。
田植機だと植付爪のケース内部のギヤがすり減って植付が上手くいかなくなったり、ベアリングがダメになって爪のケースにガタが出たりなど、植付部の故障が圧倒的に増えます。植付のロータリーケースは左右ありますが、1条分だけ(植付爪のユニット2個とロータリーケース)で7~8万円するので、6条植えであれば部品だけで50万円位かかります。
コンバインは主に足回りの故障になります。このくらいの時間になるとクローラに大きな亀裂が入り始めます。大きさにもよりますがクローラの交換だけでも左右で30~50万円はかかります。ベアリングもガタが出てくるので+αの修理代がかかります。
以上の故障内容はほんの一部で、全く思いもよらないような故障が発生する場合も多々あります。今年度で言うと田植機の前輪が完全に取れてしまったり、トラクターのフレームが折れたり。
いずれも高額な修理代がかかるばかりでなく、修理にも時間がかかる為、農家さんに作業をストップして頂かなくてはいけなくなるのでとても心苦しい思いをします。
まとめると故障の出やすくなる時間は、田植機の使用時間を1とすると、トラクター:田植機:コンバインでは3:1:2の割合ではないかと思っています。
田植機は植付部の構造が複雑に動いている為、とても消耗が激しくなります。作付面積が20町以上あるような農家さんは4~5年目で故障が多発してきます。
早すぎると思うかもしれませんが、どんなにグリスアップをしてメンテナンスをしていても構造的に何十年も使用するのは無理がある事を理解して頂きたいと思います。
農業機械の耐用時間、耐用年数は?
大型の農業機械の耐用時間は
- トラクターは2,000~2,200時間
- 田植機は500~600時間
- コンバインは1,000~1,200時間
上記の時間を優に超すような時間でも動いている農業機械は沢山ありますが、大きなリスクを抱えているという自覚をもって使用してください。
過剰に時間が経過して故障した機械の修理依頼を受けることも多々ありますが、私達整備士は何でも修理出来る訳ではありません。
たまに「なぜ修理出来ないんだ!?」とか「何度も修理してもらっているけどなおってない!」などど怒鳴り込んでくる方もいますが、無理な物は無理です。
きつい言い方ですが、その様な状態になるまで使用していた方の自業自得になります。
上記の使用時間より前に機械の更新を行えば下取りの価格も期待出来るので、今年で田んぼを辞めるつもりでなければ限界まで使用するのはやめておきましょう。www.agurimecha-redt.com
小型の農業機械の対応年数は
- 管理機は15年
- 刈払機や自走式草刈機は10年
- 動力散布機や動力噴霧器は10年
小型の農業機械は新型機に切り替わるサイクルは早めで、装備や安全装置なども進歩していっている為、余り長い年数使用するのはおすすめしません。
中でも自走式草刈機の進歩は目覚ましく、刈刃がバータイプからフリー刃タイプになったり、フレームやタイヤの強度が上がったり、エンジンの性能が向上したりと良い事ばかりです。
小型農機は流石に下取りは期待できませんが、古い機械でストレスを溜めるより新型機に切り替えてスムーズな農作業を行った方が良いかと思います。
まとめ
まず皆さんに解っていただきたいのは、農業機械は自動車と違い、ノーメンテナンス(エンジンオイル交換は除く)で長く使用するのは不可能だという事です。1町であろうが10町であろうが、土や泥の中で使用する機械なので使いっぱなしではサビ等ですぐに壊れます。きちんと洗浄やグリスアップをする事は大前提になります。
そうしたメンテナンスをしていてもギヤやベアリングなどは金属で出来ています。動き続ければ当然すり減ってきます。
特に田植機は簡単な構造ではありません。エンジンの駆動を植付部のシャフトに伝え、そこから苗載台をスライドさせたり、植付のローターをチェーンとギヤで回転させたり、更に植付爪のプッシュロッドを出したり引っ込めたりと目まぐるしく動きます。そして泥水の中で作業している為、オイルシールもダメになるのが早いです。
田植機はトラクターやコンバインよりも耐用時間、年数は圧倒的に短いというのを理解して頂けたら幸いです。
今年の春は田植機の修理で色々と騒動があった為、今回はこんな記事にしてみました(笑)