こんにちは!整備士のRedT(@RedT41921)です。
3月に入り、暖かい日も多くなってきました。春が近づいてきている気がしますね。
そろそろトラクターや管理機の使用前の点検を始める頃かもしれません。
最近はあれも値上げこれも値上げと値上げのニュースがつきません。農業でも機械の値上げや肥料、農薬と様々な物が値上がりしています。
そんな中、少し面白そうな農業機械が井関農機から発売されました。
その名も『アイガモロボ』
その名の通り合鴨がロボットになったと考えてもらえば解りやすいかと思います。田植え直後の圃場にこのロボットを浮かべ、自動走行(航行?)で雑草を抑草する効果が有ります。
上の写真で顔の様に見える部分はカバーになっていて取り外しが可能だそうです。
販売は井関農機、開発は井関農機から出資を受けた『有機米デザイン』というベンチャー企業が開発しました。
アイガモロボの開発者は、日産自動車などの大手企業エンジニアさんだったそうで『ヤマガタデザイン会社』の子会社として『有機米デザイン』を設立したそうです。
農薬も値上がり
最近は肥料だけで無く農薬も値上がりが続いています。下記のグラフでは今年に入り大幅に値上がりしているというデータが出ています。
流石に農薬が高いからと言って全ての圃場を有機栽培にするというのは無理がありますが、農水省が2021年に発表した『みどりの食料システム戦略~』では『2050年までに有機栽培面積を耕地面積の25%、100万haまで拡大する』という目標が掲げられています。
参考:「みどり戦略」を決定 2050年有機農業100万haめざす-JAcom 農業協同組合新聞
上の表を見ると2017年では有機栽培の面積は全体の0.2%、現在はどれくらい増えているか解りませんが1%も無いでしょう。それを後27年で25%まで上げるというのは、現状の栽培技術ではかなり厳しい目標ではないかと思います。
今回紹介するアイガモロボなどの人の手が無くても栽培管理が出来るような機械が増えてくれば可能性が上がるかもしれません。
自動走行で雑草を抑草
それではアイガモロボの特徴をご紹介します。
アイガモロボは写真の真ん中に見える太陽光パネルで発電し動いています。
太陽光パネルの下にある白いスクリューで圃場の土を巻き上げ濁らせることで太陽光を遮断し雑草が生えにくい圃場にします。
更に土を巻き上げる事で雑草の種子をやらかい土の層に埋没させ出芽させないようにもします。
ここで注意する点は雑草を抑えるのであってルンバの様に雑草を見つけて除去する訳では無いという事です。
自動走行の経路はスマホに専用のアプリをインストールする事で設定できます。
本体にGPSが搭載されているので上の写真の様にアプリに上空写真が表示され自分で圃場の範囲を認識させ走行航路を設定します。
どこを走行したかの確認もできるので、途中で圃場に凸凹があり座礁して走行出来なかった場所も後で確認できます。
アイガモロボの可動期間は田植直後から約三週間の間、稲の草丈が30㎝を超えたら引き揚げます。その間にきっちり抑草出来ていれば稲が十分茂る為、その後も雑草を抑える事が出来ます。
注意点は三つ
アイガモロボできちんと抑草する為に、注意点が三つあります。
- ±4㎝の圃場均平
- 5㎝以上の水位
- 水没しない丈夫な苗
この中で一番重要かつ難しいのが①の±4㎝の圃場均平ではないでしょうか。除草剤を使う栽培でも圃場が凸凹していれば雑草が発生する原因になりますが、アイガモロボの場合は水の上を浮いて走行するので更に気を付けなければいけません。
広い圃場だと均平にするのは難しい為、レーザーレベラー等で圃場を平らにする必要があります。
引用画像:四国クボタ様
レーザーレベラーを導入するのは中々敷居が高いので、代かきの時にいつもより注意して入念に代かき作業をするのが良いでしょう。
②、③は同じような内容です。アイガモロボがスクリューで上手く濁らせる事が出来る水位が5㎝以上との事。それ以下だと座礁のリスクが高くなります。
水位を高くしたら苗が水没してしまっては意味が無いので、植付する際の苗の草丈も重要です。植付時の草丈は15㎝~が望ましい草丈になります。
アイガモロボの実証レポートがあるのでこちらを見て頂ければどの様に使用したらいいかが解ります。
価格は551,100円(税込)
小売価格は551,100円(税込)となっています。個人的には思ったよりも良心的な価格なのかな?と思いましたがどうなんでしょうか。
有機栽培米を増やしていくのであれば十分導入の検討余地がありますが、初期農薬を抑える為など農薬+アイガモロボだと難しいかもしれません。
まとめ
レポートの内容を見ると、雑草の抑草効果だけでなく、苗の生育も良好になるといった副次的効果が見られるようです。
アイガモロボを使用する事で農薬の費用削減+お米の収量アップ+有機栽培米のブランド効果があれば導入費用もすぐに回収出来そうですね。
2023年度の販売予定台数は限定500台という事で売り切れになる可能性もありますので気になる方は近くの農機具販売店にお問い合わせ下さい。
一番気になったのは盗難防止策ですが、アプリで登録した圃場以外では動かなくなるように設定が出来るそうです。ただ、動かなくなるだけで持ち去る事は出来るので夜間作業させる場合は十分に気を付けて頂きたいと思います。