農機具情報局

農機具に関する情報、小売価格などのデータベース、農機具の修理説明など解りやすく説明していきます。

自走式草刈機はどこのメーカーがおすすめ?

こんにちは!整備士のRedT(@RedT41921)です。

稲刈りも終わり今シーズン最後の草刈りをしている方も多いかと思います。

今回はもはや1農家に1台以上所有されているであろう自走式草刈機(畦草刈機)について解説していきます。

 

自走式草刈機とは

自走式草刈機とは字のごとくエンジンの動力で自走することが出来る草刈機です。走行部はチェーンやギヤ駆動、刈刃の部分はベルト駆動が一般的です。

これとは別に乗用タイプの草刈機もあります。ゴルフ場や大きな公園で見た事があるのではないでしょうか。

自走式草刈機の種類

一口に自走式と言っても結構な種類が有ります。詳しい種類はこちらのリンクを参照して下さい。

参考リンク:草刈機 | 製品一覧 | 株式会社オーレック [ OREC CO.,LTD

水田で使用するタイプは

  1. 二面刈りタイプ
  2. 斜面刈りタイプ

の2種類になります。

発売しているメーカーは

  1. 斎藤農機製作所(OEM:クボタ、丸山製作所、ゼノア)
  2. オーレック(OEM:共立(やまびこ)、ISEKIアグリ)

ホンダなどもOEMで自走草刈機を販売していますが、刈刃が1枚のタイプの一面刈りなので水田の草刈りには向きません。

それでは二面刈りタイプから説明していきます。

二面刈りタイプ

二面刈りタイプは草を刈る刈刃が二面に分かれています。刈幅が1mの機種は刈刃が三面あります。

f:id:RedT:20191016160646j:plain

このように畦の上面と側面を同時に刈ることが出来ます。 それ程高い畦が無ければこれ一台で十分間に合いますね。

刈幅は両メーカー共に60㎝と70㎝そしてオーレック製のみ100㎝があります。

両メーカーの違いは刈幅にあります。

メーカー 本機型式 総刈幅 上面刈幅 側面刈幅
オーレック WM646 60㎝ 35㎝ 30㎝
斎藤農機 SGC605 60㎝ 30㎝ 30㎝
メーカー 本機型式 総刈幅 上面刈幅 側面刈幅
オーレック WM746 70㎝ 35㎝ 35㎝
斎藤農機 SGC705 70㎝ 30㎝ 40㎝

刈幅60㎝であれば一緒ですが70㎝になると違いがあります。

微妙な違いですがこの刈幅の違いでどちらを購入するか決める方も多いです。

斜面刈りタイプ

主に法面の草刈りに使用するタイプの自走式草刈機です。

ちなみに法面の読み方は『のりめん』です。私が最近まで『ほうめん』と読んでしまっていたのはヒミツです(笑)

f:id:RedT:20191017234820j:plain

エンジンは2サイクルエンジン,タイヤは4輪駆動なので傾斜地でも問題なく作業できます。全型式共に作業可能傾斜角は50度までです。

ハンドル部が伸びるので畦の上面にいながら草を刈ることが出来ます。前進後進どちらでも草刈り作業が可能です。

各メーカーのラインナップはこちら

メーカー 本機型式 刈幅 排気量
オーレック
SP301A 30㎝ 34.4cc
SP431F 43㎝ 47.1cc
SP853 50㎝ 79.4cc
斎藤農機
SGC-S301 30㎝ 25.4cc
SGC-S402A 40㎝ 47.1cc
SGC-S502A 50㎝ 47.1cc

刈幅はほぼ同じですが、排気量が違います。オーレック製は刈幅50㎝だと79.4ccなのに対し斎藤農機は47.1cc(SGC-S401と同じエンジン)と30cc以上の差が有ります。

ざっくりイメージすると背負い式の刈払機1台分の差になります。

オーレック製はベルト駆動なので排気量が大きくなってはいるのですが、それでも斎藤農機製の刈幅40㎝と50㎝が排気量が一緒なのはやや不安な点です。

どちらのメーカーがおすすめ?

実際に農家さんに購入して頂いての反応や自分で整備してみて、どちらのメーカー、型式がおすすめかご紹介します。

おすすめはずばり『二面刈り』『斜面刈り』共にどちらもオーレック製の自走式草刈機がおすすめです。

おすすめの理由を順番に説明します。

おすすめの理由『二面刈り』

まずは二面刈りのおすすめ理由です。

斎藤農機製はクボタがOEMで販売しているので、発売当初はクボタのネームバリューで二面刈り市場を独占していました。

ですが刈刃部のフレームの耐久性が無くすぐに穴が開いたり、溶接が取れてカバーが千切れたりしてしまいました。私自身も何十台もカバーの溶接や交換をしてきました。

更に、現行の型式はサイドカバー(刈刃左側)に補助車輪がようやく付きましたが、以前までは補助車輪が無く左の刈刃の下には皿状の部品が付いていて皿を地面にこすらせながら刈刃を回転させる構造でした。

f:id:RedT:20191019222907j:plain

クボタのGC703RD

地面すれすれで草刈りをするので刈った後は綺麗ですが、皿状の部品がこすりっぱなしなのですぐに交換する必要がありました。1枚2,000円弱しますし、交換もすんなりとはいかないので大変な手間でした。

そんな経緯も有り、私の地区では殆どの農家さんがオーレック製に買い替えた為、今では斎藤農機製の二面刈りを使っている方はほぼ見る事はありません。

更に現在オーレック製はサビや曲がりに強い高耐候性鋼の型式も追加され、直ぐに穴が開いてしまうといったトラブルは少なくなりました。バランス設計も見直され全長がやや長くなり旋回や持ち上げ等の作業がとても楽になっています。

おすすめの理由『斜面刈り』

続いては斜面刈りのおすすめ理由です。

刈幅30㎝タイプでは余り違いはないのですが、40㎝以上の型式になるとはっきりと違う部分があります。

f:id:RedT:20191019231722j:plain

f:id:RedT:20191019231736j:plain

上がオーレック製、下が斎藤農機製になります。タイヤの形状がはっきりと違いますね。どちらの方が滑りにくそうかは一目瞭然だと思います。実際に斎藤農機製を使用していた農家さんが傾斜部でタイヤが滑ってしまうのでオーレック製に買い替えた方がいらしゃいました。

これだけのハイラグなのでいずれラグがすり減ってしまいますが、斜面刈りの草刈機なので斜面で滑っていては元も子もありませんよね。

次はタイプ別のおすすめの型式を紹介します。

二面刈りのおすすめ型式!

おすすめはオーレック製『WM757P』です。

OEMだと共立では『AZ757』ISEKIアグリでは『WM757P-J』のカワサキエンジン仕様があります。カワサキエンジン仕様だと少し馬力が上がります。

メリット
  1. カバーが高耐候性鋼仕様で耐久性バツグン
  2. 総刈幅が710mm(375mm×2)と広い
  3. 前進3速で最高速度3.2㎞(WM746Fは1.9㎞)と速い
デメリット
  1. 値段がやや高い(WM746Fより約4万円アップ)
  2. エンジンが大きいのでやや総重量が重くなる(WM746Fより5㎏アップ)

 

メリットはおすすめメーカーの所でも説明した通りカバーの耐久性が格段にアップした事です。速度も速いので作業効率も大幅にアップしています。

デメリットはやはり価格面かと思いますが、価格差以上にメリットの部分が大きすぎるのでWM746Fを購入するのでしたら間違いなくWM757Pをおすすめします。

斜面刈りのおすすめ型式!

おすすめはオーレック製『SP852F』です。

OEMだと共立は『AZ852F』ISEKIアグリは一緒で『SP852F』です。『SP852F』がヒットしなかった為、リンクは共立の『AZ852F』になっています。

メリット
  1. 79.4ccの圧倒的な排気量、ハイパワー
  2. ハンドルが2mまで伸びるので広い法面も対応出来る
  3. 刈幅50㎝で法面だけじゃなく上面や平地でも作業が楽
デメリット
  1. 2サイクルエンジンで大排気量なので燃費がやや悪い
  2. 刈刃がベルト駆動なのでベルト交換の必要がある

 

メリットはやはり圧倒的な排気量につきます。多少背の高くなった草もバリバリ刈っていくのでとても爽快です。

農家さんの中には二面刈りの草刈機を使わずこの『WM852F』だけで上面も斜面も草刈りをしていらっしゃる方も多いです。4輪駆動で滑りにくく、どんな条件でも使えるのが最大のメリットかと思います。

デメリットは燃費の問題です。現在はやまびこ製のエンジンに変更になったので多少は燃費が改善されましたが、2サイクルエンジンでこの排気量なので中々の大食漢です(笑)そして斜面刈りで唯一刈刃がベルト駆動なので、頻繁ではありませんがベルト交換の手間があります。

ですが購入された農家さんは「草刈り作業にこの草刈機を使わないのは考えられない」と口々におっしゃっているのを耳にします。それぐらい、草刈り作業には必須のアイテムになっているのだと思います。

まとめ

今回は現在の草刈り作業には欠かせない存在になった自走式草刈機を紹介しました。

農作業で一番辛いのは草刈り作業だと言っても過言では無いと思います。暑い夏の時期なら尚更ですね。時間をかけず効率良く草刈り作業をこなす為にも、まだ所有していらっしゃらない農家さんも是非購入の検討をしてみてはいかかでしょうか?